【読書感想文】小説『旅猫リポート/有川浩』あらすじ・登場人物・感想

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いもうと

個人的に、読書の季節は秋より夏!妹です。

大学の頃、「本を読む時に感情移入するのはバカ者の読み方だ」的な話を講義で聞いた事がありますけど。いや無理あるでしょ、そんなん(笑)

一時期、気をつけて読んでいたものの、今ではすっかり開き直って、笑ったり泣いたりしながら本を読んでいます。

いやー、今回も泣いてしまいました…。

ということで今回は、有川浩先生の『旅猫レポートについてまとめていきます。

2018年に実写映画化もされている名作です。

なぜ今更この本を紹介するかというと、たまたま目に入ったからです(ドーン)。

それにしても、有川先生の本は安定して良いですね〜。

それでは、紹介していきます!

※以下、ネタバレを含みますのでご注意ください!

あらすじ

物語は、サトルとナナが出会うところから始まります。

ナナは元々野良猫で、サトルの銀色のワゴンのボンネットがお気に入りの場所。サトルもそれに気付き、猫に目がないサトルは、銀色のワゴンの下に毎晩エサを置いていくようになります。

そんなある日、ナナは車とぶつかり、大怪我をしてしまいます。それを助けてくれたのがサトルでした。病院に行き、家で世話をしてくれました。

ナナは次第にサトルに心を開き、怪我が完治してからも一緒に暮らすようになります。

しかし、5年の月日が流れ、サトルは「のっぴきならない事情」でナナと一緒に暮らせなくなってしまいます。

サトルは、自分と親しくて信頼できる人物にナナを引き取ってもらう事にし、サトルとナナが出会った銀色のワゴンで、引き取り手を探す旅に出るのです。

引き取り手候補たちとの話から、サトルの過去や人柄を追いつつ、残された時間で2人(1人と1匹)はたくさんの人や動物・自然と出会います。

登場人物

サトル(宮脇悟

主人公。猫に目がない”猫ばか”。小学生の頃に両親を交通事故で亡くし、叔母に育てられた。明るく、優しい青年。

ナナ

もう1人(1匹)の主人公の猫。車にぶつかったところを悟に拾われた。頭が良くて、ちょっぴりひねくれ者。サトルが昔飼っていたハチという猫に似ている。尻尾が7の形になっている。

コウスケ(澤田幸介)

小学生の頃からの悟の親友。同じスイミングスクールに通っていた。小学生の頃、捨て猫だったハチを見つけ、サトル家に託した。現在、奥さんは実家に帰っており、別居中。実家の写真屋を継いだが、お父さんと確執がある…?

ヨシミネ(吉峯大吾)

サトルの中学時代の友人で、一緒に園芸部をやっていた。両親が忙しいため、祖母と暮らしていた。現在は農家。茶トラの子猫「チャトラン」を拾って育てている。雑なところもあるが、面倒見の良い武骨な青年。

スギ(杉修介)

サトルの高校時代の友人。サトルと一緒に犬を助けたことで友達になる。現在は幼なじみのチカコと結婚し、ペット同伴okのペンションをやっている。今でも、サトルにはコンプレックスがあるよう…?

チカコ(咲田千佳子←旧姓)

サトルの高校時代の友人。高校時代、サトルが好意を寄せていた人物。動物好きな家に育ち、自身も無類の猫好き。動物の事となると厳しいが、明るくて優しい女性。現在、スギと犬のトラマルと猫のモモを飼っている。

ノリコ(香島法子)

サトルの母の、年の離れた妹(サトルからみると叔母)。亡くなった姉に代わってサトルを引き取った。悪気はないが、人の機微に気づくのが苦手で、言葉選びを間違えてしまう事もしばしば。不器用な女性。

感想

主観の書き分けが秀逸

この本は結構、主観がコロコロ変わるんですよね。主観によって、人名の書き方が違ったり、文章の感じが違ったりするので、これ書き分けるだけでも大変だろうな…なんて読みながらチラッと考えました。

この繊細な表現は、本ならではの良さですね。

客観的に物語を読むのではなく、登場人物の話を聞いているような感覚になります。これは感情移入しちゃいますね(笑)

その中でも、ナナ主観の部分が私は好きでした。ユーモアがあって、毒気があって、少し切なくて…まるでナナが本当に書いたエッセイを読んでいるようでした。

読み口は軽くて、スラ〜と読めてしまいますが、心にじわ〜としみます。

子供であるというもどかしさが青春。ヨシミネ

個人的には、ヨシミネとのエピソードがすごく好きでした。

中学のエピソードを読むと、ヨシミネとサトルの2人はすごく大人びています。中学生とは思えない。

そんな2人が、博多での修学旅行の夜に、ホテルを抜け出します。

理由は、ハチに会うため。両親の他界した後、ハチは遠縁の親戚に引き取られました。その親戚が博多の近くの小倉という場所にいたのです。

両親を亡くしたサトルにとって、ハチがどれだけ重要な存在だったかは言うまでもありません。

それをヨシミネは本当の意味で理解出来ていたのだと思います。だからこそヨシミネはサトルに脱走を提案し、サトルもその申し出を断りきれなかったのだと思います。

結局、この脱走はうまく行きませんでした。でもこの脱走のシーンがとても良くて。

疾走感のある描写と、がむしゃらで一生懸命で、支離滅裂な2人。2人の複雑な心情と、対比的なその脱走劇は、思わずクスッと来て、青春を感じました。

サトルはその人間性から、他の人に羨ましがられる事が多いです。その点、ヨシミネとの関係はフラットで、お互いがお互いの良き理解者って感じで、素敵な関係性でした。

実は一番人間くさい!?スギ

この作品では、嫌な人が直接出てこないんですよね。(厳密に言えば、関節的には出てきますけど。)サトルとチカコなんて、人間離れした徳の高さです。後光さしてるよ、たぶん。

あえて、嫌な人を挙げるとすると、おそらくスギなのではないでしょうか。だって、気が小さくて、ずるいんですもん。

しかしそこにあるのは、悪意ではなくて、弱さ私たち誰もが抱えているものだと思います。

次の抜粋は、スギ達の飼い猫モモとナナの会話です。

好きだけど羨ましいのよ。うちのご主人はあなたのご主人みたいになりたいのよ。

ー意味が分かんないや。サトルはサトルだし、スギはスギだろ。

本当にその通りね。でも、ご主人は自分がミヤワキになれたらもっとチカコに好きになってもらえると思ってるみたいなの。

『旅猫リポート/有川浩』159,160ページ

サトルの事、嫌いになれたら楽なのにね。そう簡単にいかないのが人間だよね。

他人と比べるなんて、無意味な事だって分かってるけど比べてしまう。ずるい自分が出てきて、自己嫌悪してしまう。

ちょっと女々しくて、もどかしいジレンマを抱えているスギ。登場人物の中では一番人間臭いのではないでしょうか。そして、それこそが彼の魅力で、愛すべき人物だということ。

サトルとチカコもこの悩ましい魂を、愛おしく思っていたのだと思います。

サトルとナナの関係性

サトルとナナは、ただの飼い主とペットの関係ではないのです。

正直、結構序盤に旅の目的はなんとなく予想がついてました。

「あーサトル、最期が近いんだろうな…。ナナはこれを知ったらどうするんだろう…。」と思ってました。

いや、浅はかでした。それこそナナに怒られそうです。

次の文は、スギ達の飼い犬トラマルとナナの会話の抜粋です。

だって、そいつからはもう助からないにおいがする!

ー 僕は黙れと言ったんだ!

『旅猫リポート/有川浩』170ページ

ナナは、全てを知っていた上で、サトルと旅に出ていたんですね。最後に、色々なものをサトルと見るために。

展開は予想通りではありながら、読んでいる内に、サトルとナナの絆を知ってしまっているので、切なくて温かい。

厳しい冬に、温かい家よりもサトルと会うことを選び、病院の外で過ごすナナの姿は、健気でありながら、大切なことを知っている者としての誇り高さすら感じます。

ナナと出会えたことで、サトルはたくさんの幸せに改めて気付き、たくさんの新たな幸せに出会えたんですね。

最優秀不器用で賞!ノリコ

ノリコさん、不器用すぎます、流石に。こんな言葉選びが下手な事ある!?あー愛おしい。

サトルはノリコさんに引き取られる事で、失うものもたくさんありました。しかしその分、出会ったものも多いのです。

ノリコさんは、サトルが失ったものばかりに目がいって、後ろめたさを感じていたようです。その一方で、サトルはしっかりと今、自分の手の中にあるものを見つめていました

「私は・・・そんないい保護者じゃなかったわ。私じゃないほうがきっと・・・」

するとサトルはノリコの言葉を無視するようにまた繰り返した。

「叔母さんが引き取ってくれて良かったよ」

『旅猫リポート/有川浩』230ページ

頭が固くて、ダメなことは絶対にしない。そんなタイプのノリコさんが、サトルの最期に病室にナナを連れてきます。

それは、正しくはない行動なのかもしれません。でも、その時もしノリコが「正しい」行動を選んでいたら、もっと悲しい結末を迎えていたことは自明です。

サトルとナナ、最後まで一緒にいれて本当に良かったね。ノリコさん、ありがとう。

そんな気持ちになったラストでした。

まとめ

以上、本を読んだ感想でした。

総合評価はこんな感じ↓

  • 読みやすさ……★★★★★
  • 感動………………★★★★
  • 意外性……………★★
  • 温かい気持ち…★★★★★
  • おすすめ度……★★★★★

ベタな展開ではあるので、意外性を求める人にはちょっと物足りないかもしれません。ですが、温かい気持ちになりますし、読後感も良いので、とてもおすすめです。

興味がありましたら是非読んでみて下さい!

それでは今回はこの辺で…おしまい!